あらゆる模倣が裏目に出ているオーソドックスな失敗続編【『コードギアス 奪還のロゼ』感想】Spoiler Warning

『コードギアス 奪還のロゼ』Emotion label Channel公式YouTubeより引用 批評
『コードギアス 奪還のロゼ』Emotion label Channel公式YouTubeより引用

>>>Spoiler Warningーーーネタバレ注意<<<
※否定的レビューです。本作を楽しめた方には不快な表現が多用されている可能性があります。

 2024年6月21日から順次ディズニープラスにて独占配信され、その前月から劇場公開もされた全12話のアニメシリーズ。

 全く期待せずに観たら序盤は普通に面白くないなで済んでいたが、中盤でかなり面白くないなとなって、最後には怒りを覚えるほどになった。

 キャラクター造形が全体的に雑。安っぽい台詞と安っぽい心理描写、一貫しない行動。魅力的な新キャラクターが一人も居ない。特に中盤から終盤は自己犠牲を払って死ねばカッコいいと勘違いしているのではないかというくらい安っぽくキャラクターが死んでいく。

 完全なOVAとして作られた『亡国』とは予算規模が違うのか、作画のレベルはTVアニメ水準で別段悪くもないが、良くもない。『亡国』はストーリーが存在しないものの、作画は劇場水準で、ジャズをバックにしたダイナミックなカメラワークの3DモデルKMFアクションはレベルが高かった。それと引き換えにするにしてはストーリーが別段大幅に良くなっているわけではないので、全体として「良いところがないが大きく駄目なところもない作品」になった感じ。

 さまざまな部分で『反逆』をモチーフとした展開や設定を組み込んでいるが、必要性を作らずに雑に入れているので全てが安っぽい。一番わかり易いのはジェレミアをオマージュしたであろう改造人間君。設定が似ているただのテンプレ噛ませ犬になってしまっている。ジェレミアがポジションとして噛ませ犬でありつつあそこまで愛されるキャラクターとなったのは、エッジの効いた台詞や動き、キャラクターの芯がしっかりしていたからだ。ガワだけなぞって造形したが故にそのクオリティの差が余計に目立つ。

 頭脳戦や政略戦、レスバもチープさが目立つ。『反逆』ではSF作品や思想や用語の引用や理論構築をかなりそれっぽくやりつつ、大味になっている部分を演出の勢いで押し切るというプロの技が光るものだった。それが今回は、引用も甘ければ理論構築も甘く、演出も全くキレていない。例えば第一話の戦闘を敵と通信して謎のチェスになぞらえて行うという謎な行動も、ストーリーとしての理屈付けも意味不明なら、それを補うべき演出でアツく押し切ることも出来ていない。9話で超合衆国とネオブリタニアで和平交渉する場面で、ネオブリタニアが揃えた内容が優秀で押し切られそうだという展開を、その中身を禄に明かさないでコーネリアにそのままネオブリタニアが優秀で押し切られそうだと台詞で言わせて処理したのには流石に呆れた。

 一番問題なのは、かなりの部分でこれを作ったスタッフはコードギアスという物語を十分に理解できているのか甚だ疑問に思うこと。大きなところで言えば、10話でラスボスのノーランドがシャルルが延命するために作られたクローンであることが明かされるが、そもそもシャルルはラグナレクの接続によって生も死も超越した世界を作ろうとしていたので思想的に自分自身を含めた人の生死に興味がない。そのため、物理的な死を乗り越えるためにクローンを用意したというのは矛盾する。更に、続くシーンでサクヤが「恐怖での支配を再現するつもりなの?」と発言するが、「恐怖での支配」はダモクレスでシュナイゼルがやろうとしたことであってシャルルの思想ではない。シャルルの治世を批判する言葉であれば、『反逆』作中でコーネリアがシュナイゼルの行動を指して明確に使用した「恐怖での支配」ではなく「力による支配」のほうが適切だろう。また、ノーランドが仮面という『反逆』において大きな意味を持っていたモチーフを携えたキャラクターであるにもかかわらず、仮面はただの正体隠し(しかも別に見た目でシャルルとわかるほど寄せていない)でしかないのも引っかかる。全体的に、前作の持つテーマ性や思想性を引き継ぐつもりのなさ、メッセージをエンターテイメントに練り込んだ作劇などに何の興味もないんだなという印象を受ける。

 シリーズキャラクターの客演については、『反逆』だけでなく、『亡国』や小説や漫画の外伝シリーズまで拾っている。とても強引な出し方という感じでもなく、ファンサービスとしては悪くない。ただ前述のコーネリアのように、脚本の拙さに『反逆』キャラが引っ張られてしまう部分には苦い感情がないではない。

 コードギアスというシリーズ作品でなければただただ面白くないだけなので途中で見るのを辞めていたと思う。その場合はわざわざ苦言を呈するまでもない作品という感じになっていただろう。しかし、過去作の要素を大いに取り込んだ上で「続編」と銘打つ作品である以上、比較評価されるのは仕方がないと思うのであえて言えば、原点のファンとして不快感を覚える非常に出来の悪い作品だった。

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