>>>Spoiler Warningーーーネタバレ注意<<<
※否定的レビューです。本作を楽しめた方には不快な表現が多用されている可能性があります。
※些か感情的になっていて文章がスパーキングしています。
2012年から2016年にかけて公開されたOVA。大ヒット作「コードギアス 反逆のルルーシュ」の続編ということで劇場版予算で作られたであろう美麗な作画、彩度の低いオシャレ雰囲気に合ったしっとり演出はそれなりに期待をそそらせる。ジャズテイストでカッコいい劇伴、両曲に合わせたダイナミックなカメラワークの3Dロボット戦闘、EDの坂本真綾氏の曲、前作に引き続きのCLAMPのキャラクターデザイン(及びEDのイラスト)など、高級品のパーツそれ自体は申し分ないのだが、それらあらゆる要素がどうでもよくなるほどにストーリーが酷い。
後年の『奪還』などと比べると歴史の引用などのフレーバーや台詞のセンス(それっぽい雰囲気のある台詞を言うが、全く意味がなかったり、何のことはないものだったりするということは歯ぎしりしながら置いておいて)は『反逆』の路線を意識している感じもあって悪くない気がしなくもない。が、そんなちょっとの良い所では埋め合わせ出来ないほどにストーリーも、キャラクター造形も薄っぺらく面白くない。だけでは飽き足らず、全てが積極的に怒りを覚えるほどに幼稚で杜撰。
酷い要素を挙げればきりがない。喚き散らしたりそれっぽいエモめな台詞を言ったり強い言葉を使うだけでバカだったり意味不明な行動が目立つ上に軸がブレブレ(というか、急に意味もなく不殺に目覚めたり仲間になったり、もはや人格が入れ替わったとしか思えない変化をコロコロする意思のない傀儡)で魅力のないキャラクターたちと安っぽい描写の数々は、ただただ稚拙に感じるだけなのでまだいい。コードギアス世界の情勢や過去作の歴史を踏襲しているとは思えない設定や言動の数々(例えばイレブンであるシンがブリタニアに受け入れられていること。スザクやユフィの努力や苦悩はなんだったんだ)。シンのギアスが本編をシンプルに観ただけでは理解困難な上に、資料を漁って理解したとて「愛しているものだけを殺せるギアス」なのに劇中でどう見ても愛してるとは思えない人物を殺しているという雑な矛盾を抱えていること(基本的にギアス描写全般がその都度なんとなくで使われている)。記憶を改竄されたルルーシュがスザクに連れられてヨーロッパ戦線の指揮をとる強引客演。「時空のバランス」などというカビの生えたファンタジー設定を理由にストーリーの都合のよい勢力に味方する「時空の管理者」とかいうコードギアス世界の全ての根幹を破壊しかねない話の都合の良いように便利使いされるデウス・エクス・マキナ。ひたすらそれっぽい演出はしつつも、結局ギアスのなりそこないみたいなのを持ってるんだか持ってないんだかみたいなよくわからん中途半端なアキトとレイラ(前述の通り、ギアス関連の描写が能力の整合性などは全く考えられておらず、その場その場で演出に使いたいなんとなくの不思議パワーとして作られている)。なんの脈絡もなく序盤で死んだモブ死者の亡霊がラスボスの前に急に立ちはだかったかと思いきや生者まで出てきてなんかなんとかなるよくわからん友情パワー演出。必要のない全滅描写とそれを解決するために「時間を巻き戻す能力」が登場。ラストの唐突な謎超能力ワープ。などなど、つまらない以上になにをどう考えたらこれでいいと思ったのか理解に苦しむものが多い。全体的になんとなくその場その場でこんな感じだと面白いかもとかカッコいいかもという感じで作ったとしか思えない。ここまで来るとオシャレな劇伴や演出が無駄に壮大なことに腹が立ってくる。
元々面白くないが今後を見守れる1章、決定的に面白くないことがわかった2章、登場人物の行動の意味不明さに慣れ始めてくる3章、そしてキャラクターたちが戦争状態の軍隊で急に人殺しは良くないと言い始める4章、ここまででこれ以上酷くなる余地を想像できないがそれを超えてさらなる酷さを提供してくれる5章はある意味凄い。急にセカイ系の設定の風呂敷を広げた挙げ句に薄っぺらい悲劇的な展開を薄っぺらい謎の人類ではない超常の存在が出てきて薄っぺらい謎の時間巻き戻しや謎のハイパーパワーで解決する展開は今文字にしていると1周回って面白そうに見えるが、全く面白くない。
ただ、これだけつまらない上に評判も悪かったシリーズを、途中で投げ出さずに物語の終わりまでしっかりとOVAで作りきったことは評価したい。が、正直全4話といわれていて、3話で全5話に変更と言われた時に、こんなもんを増やすなよと思ったのは僕だけじゃないはず(多分同時期に同社が作っていた『機動戦士ガンダムUC』が大ヒットだったので、その余波で話数を増やすことになったのではと思う)。
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